元・日本語教師で、難関の日本語教育能力検定試験を一発合格した筆者が、 渡航先や外国人妻との生活の中で改めて発見した、日本語の難しさや面白さ。 毎回一つの言葉を取り上げ、その意味や用法、日本人の感性などに触れていきます。
日本人は、相手の立場や周りの状況を考えて、自分の感情を抑えたり、意見を言うのを遠慮したりします。 「遠慮」については、以前の記事で紹介しましたね。 「遠慮」はもともと、「相手の都合や迷惑をよく考える」ことを指します。 しかし、「遠慮する」と言った場合、多くは「よく考えた上で、何かをしない」ことを指します。 ( 【第4回】遠慮(前編)より ) みなさんも会議や行事など、多くの人を前にして意見を言わなければならない場面では、とりあえず誰も反対しないような無難な意見を言った経験があるのではないでしょうか。 このように、誰もが賛成するような、公式的な意見・原則を「建前」と言います。「建前」の反 …
日常生活において、知らず知らずのうちに間違った使い方をしている言葉がたくさんあります。 間違った使い方は「誤用」といい、使用場面によっては思わぬ恥をかいたり、相手に反対の意味で受け止められる可能性もあります。 正しい使い方・意味を把握していると、円滑なコミュニケーションが可能になります。 今回は〝息抜き回〟として、誤用されやすい日本語をクイズ形式で出題。あなたは何問正解できますか?ぜひ挑戦してみてください。 問1「敷居が高い」 という言葉は、どちらの使い方が正しい? A:「あそこの料亭は政治家も来る店なので、敷居が高い」B:「この前の飲み会で店主に迷惑をかけてしまったので、敷居が高い」 「敷 …
【ごちそう(前編)】では、語源を紹介しました。「ごちそう」の“ちそう(馳走)”とは、本来「走り回ること」「奔走すること」を意味します。その様子から「もてなし」の意味が含まれるようになり、丁寧を表す接頭語がついた「ご馳走」は、「もてなしのための豪華な料理」、あるいは「(食事を)ふるまう」を意味する言葉として定着したという内容でしたね。 【ごちそう(中編)】では、日本語教育の現場で使用するテキストを紹介しつつ、学生たちとのコミュニケーションの中で「いただきます/ごちそうさま」 は日本だけの習慣であることに気づかされたと述べました。 さて、【ごちそう(後編)】にあたる今回は、私が日本語教育の現場で …
日本語教育の現場で使用する教材は、テキストひとつとっても、たくさんあります。どんな教材を選択するかは、学生のニーズや日本語レベル、学習期間や学校・教務主任の方針等で異なりますが、私がよく使用するテキストに 『テーマ別 中級から学ぶ日本語』というものがあります。 ①日常身近に体験する出来事や社会的な話題について、自分の感想や考えが理由とともに説明できること。②異なる視点や考え方を持つ相手とも、興味・関心を持って情報や意見の交換ができること。 これらを到達目標としたテキストなのですが、『ごちそう』というタイトルの文章があるので少し引用します。 “時代が変われば、いろいろなことも変化するが、食事 …
「ごちそう」という言葉を聞いたとき、読者の方々はどんなイメージを持たれるでしょうか。 寿司、てんぷら、すき焼き…私の想像力ではステレオタイプな料理名しか挙げられませんが、豪勢な食事や高級店での食事をイメージされる方が多いのではないでしょうか。 人それぞれ思い浮かぶ品目は違えど、ハレの日のや特別な瞬間を演出する料理のニュアンスが強いと思います。 今回は全3回に渡り、「ごちそう」について考えていきたいと思います。 それでは、語源から見ていきましょう。 「ごちそう」の“ちそう(馳走)”とは、本来「走り回ること」「奔走すること」を意味する言葉です。 昔は大切な客人を迎える際、準備のために方々へ馬を …