惜しまじな 君と民との ためならば 身は武蔵野の 露と消ゆとも (錦絵に残る豪華絢爛な大行列とは裏腹に、宮の覚悟とご生涯が伝わってくる) 『其儀に就いては、平に御免を蒙る。妾(わらわ)は、父帝崩御の折柄、猶母君の胎内に在って、其後、四カ月を経て、生れ出たのである。 されば、父の御顔すらも拝せずして、お別れ申し上げたのは、朝な夕なに、妾の胸を痛める哀しみである。せめては、此の都に、永く滞り、父帝の御陵に参拝して、その亡き霊(みたま)に、孝養を盡したいと思うのである。 今俄に、関東へ下れば、其儀も叶わなくなるゆゑ、此一事は、如何に忍ばんとするも、忍ぶことの出来ぬ、事 …
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