モンゴルの風

「相異・相似」-蒼き狼-

オオカミ② 私たち人間は動物種としてはホモ・サピエンス・サピエンスと称される1 属1種の存在で、かつては他にも多くいた人類のうちから現生人類としてただ一つ生き抜き、動物種の中で現在最も繁栄している存在である。現生人類の祖 …

雄神神社

オオカミ②

私たち人間は動物種としてはホモ・サピエンス・サピエンスと称される1 属1種の存在で、かつては他にも多くいた人類のうちから現生人類としてただ一つ生き抜き、動物種の中で現在最も繁栄している存在である。現生人類の祖先はミトコンドリア DNAの分析から約320万年前にエチオピアに暮らしていたルーシー(ミトコンドリア イヴ)という女性を起源していることは今日明確である。そして13 万年前ごろに、現生人類はアフリカの地からユーラシアにはじめて移動拡大した。

そのユーラシアの地には約40 万年前からネアンデルタール人(ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス)と呼ばれる人類が生息していた。しばらくは、現生人類とネアンデルタール人はマンモスやウシ、ウマ、トナカイなどの草食動物を摂食するための捕食者として、お互いに道具を用いた狩猟を行っていた。しかし、地球の気候変動の影響もあり、約4万年前にネアンデルタール人は絶滅した。

ペンシルヴァニア州立大学の教授である古人類学者のパット・シックマンは現生人類がユーラシアに浸入後、ネアンデルタール人が急速に絶滅していった原因の一つとして気候変動以外にオオカミイヌの存在があるという。
オオカミイヌとは現生人類がユーラシア大陸で、オオカミを家畜化するために品種改良したであろう動物であり、現在の野生のオオカミともイヌとも違う動物であるらしい。
オオカミは社会性のある動物であり、仲間に対してはぬくもりすら感じさせられる動物のようだ。しかし、よそ者に対しては凶暴で、執拗になおかつ無慈悲に追い詰めていく動物でもあるようだ。だから家畜化されることはない。現生人類がオオカミから品種改良したオオカミイヌという家畜の力を借りて、大氷河期の中で狩猟を拡大させ、種を繁盛させていき、ユーラシアでの捕食者としての頂点に向かっていくことで、かつてユーラシアの地にいたネアンデルタール人は急速に衰退し絶滅した。また今、野生のオオカミも絶滅の危機にある。

こんなオオカミに対する感情が、日本人の大神(オオカミ)にもモンゴル人の蒼き狼(ポルテ・チノ)にもDNA の深くに、意識の奥底に刻み込まれているのではないだろうか?同種の人類を滅亡させ、決して家畜化されることのない社会性のある動物を品種改良して一部家畜化することで繁栄を築いてきたことが、野生のオオカミに対する神秘性と震え上がるような凶暴性に対する畏怖との混在をホモ・サピエンスは植え付けられているのではないだろうか。

農耕民、遊牧民などの違いではなく、4万年前などというそんな遠い昔のことが、今の私達に影響を与えているなんて考えられないと思われるのは至極当然である。しかし、現在の宇宙年表というものからいえば、宇宙の現在までの歴史の長さは 138億年である。そして、ハーバード大学教授であるダニエル・E・リーバーマンは「人体600万年史」という著書の中で人類の狩猟時代をこう書いている。
「600世代以上も前、人はみな、あらゆるところで、狩猟採集生活を送っていた。比較的最近まで‐ー進化論的な時間にすれば、ほんの一瞬前まで‐あなたの祖先は 50人以下の小さな集団で暮らしていた。」と。
そう、4万年前とは、ほんの一瞬前なのではないだろうか。

大神神社の奥の院と呼ばれる雄神(おが)神社なるものが奈良県ののどかな大和高原の中にある。オオカミではなくオカミになるのかもしれないが、この雄神神社もご神体はその近くにある雄神山(雄雅山ともいう)であり、石室に白蛇が生息しているとの逸話などからも奥の院といわれる所以である。 私ごとではあるが、この田畑が広がり季節の移ろいに伴って彩りを変えていく山野の風景が広がる雄神神社の麓で、農耕民族の末裔である私は、現在、畑作の修行に悪戦苦闘している。

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