マーケットの魔術師

毎年様々な話題に事欠かない経済ニュース。例えば、世界経済に大きな衝撃を与えたリーマンショックは10年も前の話だが、今もなお、その記憶は生々しく残る。いつどうなるか分からない経済状況を踏まえ、我々は自分の資産をどう守れば良いのか?シリーズ「マーケットの魔術師」では、世界の政治・経済情勢に精通した筆者による、実践的な資産防衛術を紹介する。

デフレに強い銘柄について

今月末に、キャッシュレス決済のポイント還元が終了します。 これにより、消費税は実質的に再増税される形になるわけです。 平常時ですら、増税による消費の落ち込みが不安視されていましたが、今回は、コロナショックの影響がさらなる …

今月末に、キャッシュレス決済のポイント還元が終了します。
これにより、消費税は実質的に再増税される形になるわけです。
平常時ですら、増税による消費の落ち込みが不安視されていましたが、今回は、コロナショックの影響がさらなる重しとなるため、終了後の消費の落ち込みは、当初考えられていたものよりも大きなものになるでしょう。
例えば、今回の新型コロナウイルスの発生源となった中国では、感染の終息を迎えたとしていますが、消費動向が鈍っています。
雇用状況と賃金が悪化するのではないかとの見方が広がっていることが、その原因です。
日本でも、すでに派遣労働者の雇い止めや、コロナショックによる企業の倒産件数の増加などがニュースになっています。
なお、日本では現金給付10万円が実施されていますが、世界恐慌を超えるレベルとも言われる経済危機に対する施策としては力不足のため、1回ぽっきりでは消費の押し上げ効果としては弱いと言えるでしょう。
そのため、今後、さらに消費が低迷し、節約志向が強まるものと考えられます。
つまり、デフレ脱却がさらに遠のいたことになるのです。
そんな中でも消費者がお金を落とす企業はどんなところなのか、ということについて、今回は取り上げたいと思います。

デフレの寵児たちの動向

日本は長らくデフレの中にありますが、そんな中、デフレの申し子と言われるような企業が業績を伸ばしてきました。
例えば、100円ショップのダイソー(4046)や、前回紹介したセリア(2782)などはその代表ともいえる企業で、今後も業績は概ね堅調に推移するでしょう。

ダイソー(4046)

セリア(2782)

また、サイゼリヤ(7581)もデフレの中、低価格路線が消費者に受け、業績を伸ばしてきました。
しかし、同社の業績はコロナショックの前から不振に陥っています。
原因としては、同社にとって追い風となった「ちょい飲み」ブームが落ち着いてしまったことに加え、全席禁煙による喫煙者の客離れが挙げられます。
また、支払い手段の多様化に乗り遅れている、低価格ゆえに付加価値の高い商品が生み出せないといったことも、同社の業績不振の原因として指摘されています。
それでも、中国ではサイゼリヤは人気があり、それによって業績が下支えされていたのですが、今回のコロナショックは、その中国の店舗を休業に追い込みました。
日本の店舗も、緊急事態宣言を受けて休業したり、営業時間と酒類販売時間の短縮を行うなどの措置を取らざるを得ず、同社にとってはさらなる業績の下押し材料となったのです。
現在、緊急事態宣言は解除され、営業時間は延長されていますが、それでも以前よりも営業時間は短縮されていることから、同社にとって厳しい状況はしばらく続くでしょう。
テイクアウトも提供しているものの、業績が元通りの水準に戻るまでにはかなりの時間を要すると考えられます。

サイゼリヤ(7581)

デフレでも好調を維持できる企業とは

このように、デフレの寵児と呼ばれる企業は様々ありますが、今回のコロナショックが恩恵になるか、逆風になるかは、業種によって異なります。
飲食関係は、逆風になるところが多いようです。
一方で、小売はインバウンドに依存していた企業を除き、好調なところが多いようです。
なぜなら、生活必需品を扱っているからです。
今回のコロナショックの中で底力を見せる企業に小売業が多かったのは、そのためです。

実質的な消費増税により消費者の節約志向がさらに強まっても、やはり生活必需品は欠かせません。
食品、医薬品などを扱う小売業の中でも、特に価格競争力のある企業…簡単に言えば、ディスカウントストアのような、他店よりも安く商品を提供できる企業にとっては、今回の消費増税は追い風になると考えられます。
このような企業の中で、注目を集めているのが、業務スーパーを展開する神戸物産(3038)です。
同社の2020年10月期2Qは営業利益が前年同期比32%増と大幅な営業増益になりました。
昨年のタピオカブームのさなか、業務スーパーで販売したタピオカミルクティーが、1食あたり80円、作る際に加える牛乳の分を加えても1食110円程度で作れてしまい、味も良いと評判になりました。
昨今のSNSブームに乗って、業務スーパーで販売するタピオカミルクティーをおしゃれな容器に入れた様子などがインスタグラムなどに投稿され、大ヒット商品となったのです。
その結果、TVに取り上げられたことで同社のメディア露出が増え、知名度も上がったところに、今回のコロナショックによる外出控えと内食需要の拡大が起こりました。

このように、現在の同社の状況は、タピオカブームとコロナショックの恩恵を受けたものとなっていますが、元々業務スーパーはまとめ買いに向いた商品が多く、節約志向にマッチしています。
業務スーパーが記述のような恩恵を受けて売上を伸ばす中、利益率の高いPB商品の販売も好調に推移しているようです。
同社の営業利益の今期会社計画に対する進捗率は61%と高進捗ですので、今後、上方修正する可能性は十分に考えられるでしょう。
今後は、既存店売上高の伸びがどれくらいになるか、というところにも注目したいところです。

神戸物産(3038)

「ディオ」「ラ・ムー」などのディスカウントストアを西日本中心に展開する大黒天(2791)も価格競争力があり、全店売上高は堅調です。
同社は、安価で高品質な商品をさらに提供し、競合他社との差別化を図ろうとしています。
そのために、一般的な小売からの脱却を図り、食品の開発から製造、販売を自社で行う製造小売業へ転換することを目標にしています。

大黒天(2791)

コスモス薬品(3349)は、九州を中心に「ディスカウント ドラッグコスモス」というドラッグストアを展開しています。
ドラッグストアは医薬品のみならず食品を取り扱うところも多いのですが、コンビニやスーパーよりも食品の粗利率を下げる分、医薬品や化粧品の高い粗利率でカバーする、という戦略をとっているのが大きな特徴です。
コスモス薬品もその点は同じなのですが、競合他社と異なるのは、特売や時間限定の割引セールは行わず、いつでも低価格を提供することを方針にしていることです。
こうするメリットとして、特売のための値札替え、陳列の棚替えなどの作業を省略でき、発注や納品の作業も簡素化できることが挙げられます。
その結果、物流が平準化され、全体のオペレーションコストを抑制できるのです。
また、総菜や生鮮食品を扱わない、袋詰めはセルフサービスなどの施策も、ローコスト化できる要因となっています。
今後、同社の既存店売上高がどのように伸長していくか、という点にも注目したいところです。

コスモス薬品(3349)

上中 康司 拝

マーケットの魔術師 過去記事一覧

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