国をまもってきた日本の歴史

太古の昔から連綿と続く我が国は、一度も王朝が変わることなく続いてきた世界でも稀な歴史を持つ国である。そんな我が国が、他国の侵略を受けることなく長い歴史を辿ることができたのは、果たして「極東の島国」という地理的な要因だけが理由だろうか? シリーズ「国をまもってきた日本の歴史」では、気が遠くなるような長い時間、我が国がその美しき国体を守り続けてこられたその根源に見え隠れする、たぐいなき歴史や文化に迫る。

建国と日本のまもり(2)

 前稿では2月11日「紀元節」(現:建国記念の日)の由来について、そしてその建国以来の悠久の歴史を背負っていたという我が国国防の側面について述べた。その際「初代神武天皇によって日本が建国された」とだけ叙述したが、国を建て …

 前稿では2月11日「紀元節」(現:建国記念の日)の由来について、そしてその建国以来の悠久の歴史を背負っていたという我が国国防の側面について述べた。その際「初代神武天皇によって日本が建国された」とだけ叙述したが、国を建てること、そしてそれを何百年何千年もまもり営み続けることは誠に大業である。それは、西洋列強に植民地とされたアジア・アフリカ諸国における苦難の歴史を見れば理解できよう。もっとも、近代日本のことを悪く書こうとする歴史教科書であればあるほど、その辺の話はいたってささやかにしか触れられないようだが。

 国家をまもるためには、古今東西を問わず軍事力が必要なのは言うまでもない。その軍隊の最高統帥者は、昭和戦前期まで天皇であった。近代的軍隊としての陸海軍は明治初年に設立されるが、では日本軍=天皇の軍隊がいつ、どこでできたとされているのか読者諸賢はご存じだろうか。

 神武天皇の建国にあたっては、現在でいうところの宮崎から奈良(橿原)まで「東征」が行われた。宮崎神宮の近く、東征までの神武天皇の皇居(皇(こ)宮(ぐ)屋(や))跡とされる場所に宮崎神宮の元宮である皇宮神社が鎮座している。その境内にあるのが、高さ12メートルもの「皇軍発祥之地」碑である。これは日本建国すなわち橿原宮での神武天皇即位から2600年目にあたるとされる紀元2600年(=昭和15年)記念事業の一環として、昭和17年(1942)宮崎県奉祝会により建立されたもの。

「皇軍発祥之地」碑 著者撮影

碑文の揮毫は、当時参謀総長を務めていた杉山元陸軍大将による。建国の地橿原へと向かう神武東征は、最高統帥者として最初の軍事行動だったと見なされていたことになる。とはいえ軍事行動でもって、決して“敵”を殺戮していったりしたわけではないということはまた別項で述べたい。なお、神武天皇をお祀りする宮崎神宮も、紀元2600年記念事業において橿原神宮に次ぐ規模で境内地が大拡張されている。

 同じ宮崎県の美々津(現:日向市)は、豊後水道・瀬戸内海を経て東征する神武天皇の「お船出の地」とされた。海岸近くの立磐神社は、お船出の際の神武天皇による航海安全祈願にちなんで、第12代景行天皇の御代に住吉三神をお祀りしたのが起源と伝わっている。境内には、お船出の際に風待ちをしたという「神武天皇御腰掛岩」が聖蹟として残されている。紀元2600年に先立つ神武天皇御東遷2600年記念事業においては、立磐神社の境内拡張・社殿修築が行われた。そしてその境内に昭和17年、やはり紀元2600年記念事業の一環として「皇軍発祥之地」碑を上回る12.6メートルの「日本海軍発祥之地」碑を建立。こちらの揮毫は、昭和15年7月まで内閣総理大臣を務めた米内光政海軍大将。日本海軍の起源は、即位前の神武天皇御親率の船団なのであった。往時世界を震撼させた大日本帝国海軍は、実に建国前からの歴史を背負って日本史上最強の敵アメリカと戦っていたのである。

「日本海軍発祥之地」碑 著者撮影

「日本海軍発祥之地」碑の方は、終戦直後に占領軍によって碑文が破壊された。アメリカは、日本海軍の聖地をその歴史ごと葬り去ろうとしたのかもしれない。しかし昭和44年、地元有志の尽力と海上自衛隊などの協力により碑文は復元され、現在に至っている。「日本海軍発祥之地」碑顕彰保存会が碑傍に設けた説明版には、「建立・昭和17年(紀元二千六百二年)9月10日」「復元・昭和44年(紀元二千六百二十九年)9月12日」と記されている。神武東征船団の後輩にあたる海上自衛隊も大日本帝国海軍と同じ歴史を背負いながら、目下同盟国のアメリカ海軍と協力してアジア、そして世界の海をまもっているのである。

国をまもってきた日本の歴史 過去記事一覧

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