全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。 一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。
11月23日は「勤労感謝の日」です。現代の祝日法の定義によると「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝する日」とあります。これは1948年、戦後に定められたのです。もともとは「新嘗祭」で、五穀豊穣に感謝する日でした。 「新嘗祭」とは、宮中において2月17日に行われる小祭の「祈年祭」に相対する宮中行事です。春に「祈年祭」を通して、神様に五穀豊穣を祈り、秋には実りを神様に感謝してその年の収穫物を頂くのが「新嘗祭」です。 「嘗」は「なめる」「にえ」と読む漢字で、味わうという意味です。したがって、「新嘗祭」とは新しい穀物を味わう祭りとなります。 天皇陛下が、その年に収穫された新穀などを天神地祇(天津 …
11月に入ると、神社には七五三詣りの親子連れをよく見かけます。子供の健やかな成長を願う「七五三」ですが、節供には含まれていません。年中行事の一つです。「七五三」とひとくくりにされていますが、元々は平安時代から公家や武家で行われていた別々の3つの儀式でした。 髪置きの儀(かみおきのぎ)は、3歳になった男女の子供が、それまで剃っていた髪を伸ばし始める儀式です。平安時代は病気が髪の毛から入ってくると考えられ、3歳までは坊主頭で育てられていたのです。男の子、女の子両方が行う儀式でしたが、後に女の子の行事となります。 袴着の儀(はかまぎのぎ)、別名は着袴(ちやっこのぎ)ともいいます。5歳になった男 …
五観の偈 功の多少を計り彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る。※この食事が目の前に出されるまでのすべての行程を考え、自然の恵みと関わった多くの人々の働きに感謝する。 己が徳行(とくぎょう)の全欠を忖(はか)って供(く)に応ず。※自身の行いが、尊い命と労力でできている食を頂くに値するか反省して、供養を受ける。 心を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす。※心を清らかに保ち、誤りを避けるため、三毒の貪(むさぼり)瞋(いかり)痴(おろか)を持たないことを誓います。 正に良薬を事とすることは形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為り。※まさに食は薬であり、健康を保つために頂く …
「日本料理」と「和食」は明治維新の時代に入ってきた「西洋料理」、「洋食」に対して生まれた言葉です。「日本料理」は会席料理など料亭で出されるような格式ばった食事を思い浮かべ、「和食」となると、日常の食事から元は海外から伝来してきた料理を日本風に変えた料理、例えばカレーライスなども含まれます。 遺跡などからわかるように、元来日本人は魚や貝類などの海産物を主に食してきました。縄文時代の貝塚からはシジミ、ハマグリ、カキ、サザエ、アワビなどの貝類が出てきています。土器も発見されていますので、縄文時代には貝を土器で茹でたり、煮たりしていたと思われます。 稲作は縄文時代に始められたと伝わっていますが、ま …
お箸の起源は古代中国からだと云われています。「魏志倭人伝」には、日本人は手食すると記載されています。しかし、古事記にはお箸が記されています。古代中国から入って来る前から日本にもお箸はあったのかもしれません。普段の食事に使われていなくても、神様へのお供え、儀式用の祭器に使われていたのでしょう。一方で、普段の食事は手食だったと思われますが、現代でも世界の中には「手食」の形をとっている地域も多くあります。その場合は、食べ物等を掴む手は主に右手と決められていることが多く、左手は不浄とされ使うのは不作法となります。 当時のお箸は「折箸」と言って、一本の竹を折り曲げたピンセットのような形をしていました …