お城カタリストの城語り

日本には現在もかつての姿をとどめている城が12箇所あるという。古くは国府の守備の拠点として、そして武士の時代には、武士の居住地と敵からの侵入を防ぐためのバリケードとして作られた日本の城は、やがては政治の拠点としてその役割を変えてきた。シリーズ「お城カタリストの城語り」は、お城カタリストの野口紀美氏が、城の歴史にスポットを当て、我が国の歴史や文化を分かりやすく解説する。

【城の歴史26】農村や自治都市の城 戦国時代の「環濠集落」

戦国の世で城を築いたのは、大名だけではありません。例えば、和歌山県にある根来寺(ねごろじ)は、堀や土塁・物見櫓などの防御設備を強化し、戦乱に備えて城塞化しています。本願寺派門徒の一向一揆の拠点として築城された石川県の鳥越城(とりごえじょう)や、織田信長と10年に及ぶ戦いを繰り広げた石山本願寺(大阪府)など、宗教勢力は寺と門徒を守るために城を築き、武器を持って戦いました。 室町時代中期から戦国時代にかけて、一部の農村や自治都市でも、敵の襲来に備えて城を築きました。それが「環濠集落(かんごうしゅうらく)」です。環濠集落というと、佐賀県の吉野ケ里遺跡のような、弥生時代の環濠集落を思い浮かべるでしょう …

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