全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。 一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。
そろそろ年賀状を考える時期になってまいりました。 最近はメール、ラインなどに押されて、年賀状を出す人も減ってきてはいます。 確かに、年の初めの挨拶なら、わざわざ葉書にしなくても、電話、めーる、SNSでもこと足りると考えても良いかもしれません。 だけども、やはり葉書の方が「ぬくもり」を感じるというのも否定できません。 そこで、「年賀状」の歴史を紐解いてみましょう。 日本では古くから、年始の挨拶回りが行われていました。挨拶回りができない、離れた場所に住んでいる人に、文書を送っていたのが年賀状の始まりです。おそらく書状を送るようになったのは江戸時代ぐらいからではないかと考えられます。飛脚に頼んだ …
夜空に浮かぶ月が美しい季節となりました。 お日様とお月様。お日様が陽ならお月様は陰。 いつも燦然と輝く太陽は、明るい光を地上に与えてくれるなら、月は静かな安らぎのほのかな光を与えてくれる存在かもしれません。 今年の「中秋の名月」は10月1日です。いわゆる「お月見」の日です。 単に月を愛でる慣習は、古くは縄文時代からあったと云われています。名月の日に月を鑑賞する、いわゆるお月見の慣習は平安時代から始まります。唐の国から入ってきた慣習ですが、月を愛でるという風流な行事は貴族の間で流行りました。「中秋の名月」は秋の中日、旧暦の8月15日のお月様を指しているのです。一方で「仲秋の名月」は、旧暦で7月 …
八朔(はっさく)と言っても、果物の「八朔」ではありません。 八月一日のことです。八月の朔日。朔日というのは一日を表します。 「朔(さく)」とは地球から見て、太陽と月が同じ方向となるので、月が見えないのです。 この日を月の始まりとし、「月立つ」から「ついたち」と呼ぶようになりました。 または、この日から新しい月が出ると考え一日は、旧暦では新月となります。 新月となる一日は毎月やってきますが、八月一日は昔は特別の日として、各地で行事ごとが行われていました。 農村地域では、この日に恩人や世話になっている人に初穂を贈る慣習がありました。 初穂は田の実ということで「田の実の節句」とも云われていたようで …
七月は和名月で「文月」といいます。元は「文被月」であり、 七夕に和歌を詠んだり、短冊に願い事を書いたりして「文を広げて晒した」からという説と 稲穂が膨らむので「含み月」から「文月」になったという説があります。 前記の説をとって、「文」から「手紙」についての作法やエピソードをお伝えします。 正式な手紙の形は前文、主文、末文、後付となります。 前文には、頭語(拝啓・謹啓・一筆申し上げます・謹んで申し上げます他)があり、時候の挨拶(梅雨の候、夏本番となり、など)、先方の安否(ますますご健勝のことと)、感謝の言葉(いつもお世話になっており)が含まれます。 主文は、起辞(さて、ところで、他)から始ま …
傘が手離せない毎日です。さて、今回は「傘」についてお話しましょう。 「傘」というと、日傘と雨傘のどちらをイメージされますか。 日本なら、やはり雨傘でしょうか。意外に思われるかもしれませんが、「傘」は日傘から始まります。 日本に入ってきた時期は明確にはわかりませんが、舒明天皇の時期に、仏具の一つとして百済から献上されています。当時は日射を避ける「日傘」として用いられました。 中国で「天蓋(開閉できない」として発明され、貴人などに魔除けとして差し掛けられていました。 日本に伝わると、「衣笠」「絹笠」といわれました。 その後日本で改良され、開閉式が用いられるようになり、雨傘として使われるようになって …