全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。 一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。
外国の方たちは、日本語は難しいといわれます。 一方日本人は、英語に苦手意識があります。6年間、大学も含めると、10年間学んでも話せることはできないからでしょう。しかし、英語は26文字のアルファベットで構成されており、日本語のひらがな51文字の半分です。そのうえ、日本語には漢字、カタカナもあります。ひらがな、漢字、カタカナという三種類の文字を小学生時代に学び、使い分けることができます。英語ができなくても卑下することはないとおもうのです。 さて、その日本語ですが、昨今は乱れが目につきます。 和製英語はいうまでに及ばす、日本語の表現も文法を無視し、新しい形が生み出されていきます。 令和にな …
全日本作法会に師事している時、親先生が「作法の原点は古事記にあります」とご教示くださったことがあります。 「古事記」は漢文で記されていますが、やまと言葉でできている歴史書でもあるのです。 古事記と作法、どのような関係があるというのか。何年か前に、古事記の朗読会で前座として出演したときに、ある老紳士から問われたことがあります。お箸が出てきても、作法と結びつく描写はないではないか、と老紳士は考えられたのでしょう。 確かに、古事記には作法としての描写はありません。 お箸のことも、スサノオノミコトが川に流れているお箸を見て、上流に人が住んでいることを知ったということしか記されていません。お箸 …
四季おりおりの花が咲く日本は、自然界にも多くの「色」を目にすることができます。 化学染料があまりなかった時代は、藍や紅花、蘇芳や茜、古代紫などの天然染料が使われていました。 着物の友禅染には、ツユクサの花弁から抽出した色素が下絵に使われていました。 友禅の着物には100以上の色が使われることもあります。 古くから様々な染料が生み出され、主に着物生地を染めていたのです。 着物、帯に多くの色を使っても、喧嘩をしないのは、日本の風土から生み出された色だからといえるでしょう。また、日本の絹には優しい色調が入っていくそうです。生地の性質も様々です。 色は不思議です。 見る色、身に付ける色は私たちの心 …
現代の生活は多くの物資で溢れています。 その中には「縁もの」あるいは「ラッキーグッズ」、「パワーグッズ」と云われる物もたくさんあります。 「縁起もの」、元は神社やお寺で授けてもらうものを指しています。 縁起という言葉の語源は「因縁正起」で、神社や寺院の由緒、すなわち成り立ちのことです。 交通手段がない時代は、社寺にお参りすることが容易ではありません。そこで社寺の関係者が由緒を肩にかついで全国を歩いて配りました。「縁起をかつぐ」という言葉は、そこから生まれたのです。 当時の人々は、縁起を持っていると神様や仏さまと一緒に生きていると、安心したのでしょう。そして、縁起という由緒書に神社やお寺 …
私たちが住む日本列島は、海に囲まれています。列島の幅は広いところでも300㎞ですが、長さは3500㎞もあり、しかも陸地面積の75%が山地、山麓で平地は少ない島です。 縦に長く、幅が狭く周りが海ということは、風や雨などの気象の影響を受けやすい島でもあります。 古くから、日本列島で暮らす人々は、天候の有難さと困難さを熟知していたのでしょう。 「自然」を神様と崇め、自然に添った生活を営んできたのです。 自然を支配するのが人間である、と考える西欧文化とは対照的です。 庭がそれを如実に表しています。例えば、ベルサイユ宮殿の敷地内にある「ガーデン」には噴水があります。一方、日本庭園には滝がありま …