和・作法の彩り

全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。
一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。

夏を迎える作法

文月に入り梅雨明けが待ち遠しくなってきました。夏はもうそこです。

四季が明確な日本。昔から四季それぞれの過ごし方を模索し、工夫し、少しでも快適に健やかに、春夏秋冬を送ってきました。そう、現代のようなエアコンなど無かったのですから。

春夏秋冬の中でも、辛い季節こそ工夫する必要があります。春や秋は特別なことをしなくても比較的過ごしやすいのですが、夏冬はそうはいきません。

冬は地域的なこともありますが、着るものを多く着たり、火を使ったりすると暖かいし、動けば体を温まります。

なんといっても夏です。動かなくても、裸でいても暑い。暑さだけで体が弱るのですから、気持ちまで下がってしまいます。

なので、夏をいかに気持ちよくやり過ごすか、そのことに知恵を絞ってきました。

今では死語になりつつありますが、以前は「衣替え」がありました。時期は春から夏に変わるころ。六月一日ごろです。夏に身に着ける装いは、できるだけ自然の繊維でできた衣装。絹、綿、麻などは風通しもよく心地よい風合いです。意外に着物は、体に密着しないので、涼しいのです。袖口も風を入れこみ抜けさせます。

また、そのころに箪笥から着物を出して風を通す「虫干し」も行っていたのです。

衣装だけでなく、部屋のしつらえをも夏を迎える用意をしていました。

襖をはずし、よしずやすだれを着けて風の通り道を作ると同時に、見た目も涼しさを演出していたのです。風鈴の音も耳から涼しさを感じるようにとのこと。

畳のうえには「あじろ」を曳いてひんやりとした感触を感じました。

夜には蚊帳を吊ったので、子供はそれが楽しくて、出たり入ったり。ちなみに蚊帳は意外と暑いのですけど。

衣替えは部屋も行い、日本の、特に京都の町屋は夏に重点を置いて建てられたのかもしれません。木材で建てられた住宅は風さえ通れば涼しいのです。

なので、「せんざい」と言われた、小さな中庭を家屋の中に作っていました。

そして、五感から涼を取り入れようと小物にも拘りがありました。

金魚鉢、うちわ、扇、ガラスの食器など。

行事ごとでは、六月三十日の「夏越の払い」。

その日、神社などに配置された茅の輪をくぐり、健康を祈ります。

「水無月の夏越の祓いする人は、千歳(ちとせ)の命延(の)ぶというなり」

と唱えながら、茅の輪を8の字に三回くぐると、夏を元気に過ごせると云われてきました。

 

各地で行われる夏祭りは、主に「疫病払い」を願っています。

大阪の夏祭りは、7月1日の愛染祭りで始まり、7月31日の住吉祭りで終わります。

 

梅を漬け、食の上でも、元気に夏を迎える準備をしていたのが、日本人の知恵でした。

梅雨が明けると、クマゼミやミンミンゼミが鳴きだします。

朝晩涼しくなると、ヒグラシの鳴き声に逝く夏の寂しさを感じます。

蝉の鳴き声で夏の始まりと終わりを感じる。その感性は日本人たる所以でしょう。

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