和・作法の彩り

全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。
一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。

第2章 心身を磨く食事の作法

1.食べる事は生きる事

古今東西、人は美味しいものを求め続けてきました。いえ、今も美味しい料理、食材を求めています。を元気に保つため、一日でも長く生きるため。元来「食」の目的はそのことです。そのために、何よりも優先して食べることへの欲求が強いのでしょう。

しかし、それなら身体に必要な栄養が取れることだけを重要視すればいいのであって、「美味しさ」を求める必要はないのです。それなのに、例外なく人は美味しさを求める欲求はつきることがありません。

木の実や植物をそのまま食べていた時代もありますが、火を通し、調味料を創り、調味料で味付けすることで、同じ食材でも味の変化を楽しむことを覚えます。料理法の進化でさらに「美味しさ」を求めるようになっています。

中世の大航海時代は、香辛料を求めてヨーロッパからアジアへの旅が始まったのです。それは、植民地時代の始まりでもありました。何故でしょうか。何故、神様は人間に「美味しい」という感性を与えたのでしょう。「美味しさ」「美味しい」と感じる心は、精神的な満足感を与えてくれ、幸せな気持ちにしてくれます。幸福感は、人を明るい気持ちにして、生きる喜びを与えてくれます。

「食」の本来の目的は「生」への執着心を持つことかもしれません。

食材から体が欲する栄養を取り入れ、美味しさで心が欲する満足感を取り入れ、明日への活力を生み出す。また、「食」は様々なことを教えてくれます。食材は自然の恵み、いわば、神様からの恵みです。日本は四季折々の植物や、周りが海なので、魚介類に恵まれた土地です。大自然という神のお陰で、今日も明日も命を永らえることができるということを体感できます。ゆえに感謝の気持ちが沸き起こるのです。感謝の気持ちを我々に宿してくれます。自然は人間の力ではどうすることもできません。自然の厳しさを与えられても、人間の力が及ばない無力だということを見せつけられます。祈るしかない、祈りの大切さに気づかせてくれます。

人は一人では生きてゆけません。親から命をもらい、成長してゆく中では、多くの人と関わり、師と仰ぐ先生、友人、仲間たちの教えや友情に助けられたり、助けたりということが起こります。そして、感謝の気持ちを抱くことでしょう。

食べること、生きることには感謝が大切になります。

食べることは生きる事。そして、自身の命を永らえるために他の命を奪うことでもあるのです。いわば奢りでもあるのです。我々の味覚を満足させるために小さな命を奪っているという事実を受け入れ、命の交換が行われている敬虔な心を忘れないようにしたいものです。

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