「…好は、私に母の飯盒を洗いよく乾かすようにと言った。『それがお母様の骨壺よ。』時計が九時を鳴らすと、私たちは荷物を背負って火葬場へ向かった。到着するとすぐに羅南からずっと持ってきた箸で、私たちは丁寧に母の小さな遺骨を飯盒に入れた。…」(「竹林はるか遠く」より引用―以下引用は書名のみ) 飯盒を母親の骨壺にしなくてはならなかった姉妹の悍ましい事情を、史実に従って振り返ってみたい。満洲からの引き揚げを記した手記や歴史書に、「竹林はるか遠く」と同じような悲惨な記述が多い。また、その責を一様に関東軍に求める声も少なくない。 確かに、「精鋭を誇った関東軍が先を競って逃げている。実に情けない姿である …
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