建設経済新聞 出張所

㈱京都設備 代表取締役 倉本和幸氏【シリーズ 風貌~私の経営哲学~】

【〝尽くす〟が希薄な世で】
 冷熱・暖熱・情熱の3つの〝熱〟で空調ニーズに応える設備会社、㈱京都設備。倉本氏は『情熱と志を胸に、信頼・繁栄・幸福の和を社会に広めます』をモットーとし、同社の先頭に立ち続けてきた。
「人それぞれが持つ〝熱〟をしっかり受け止め、どのように応えていけるか。目に見えない〝想い〟を大切にしたいと考えています」

【〝顔〟の見える仕事〝声〟の届く現場】
 同社の事業はエンドユーザー相手の元請け工事が大半を占める。
「異端児と言われるかもしれませんが、下請け・孫請けで元請け業者を喜ばせても意味がないと思っています。お客様の声を基に事業展開する同業者は、あまりいないでしょうね」
 現場社員が持ち帰る〝生の声〟が、同社の新規事業に繋がった。京都景観賞を受賞したオリテウム事業(空調性能を低下させないデザイン性の高い室外機カバー)や摂美事業(空調を起因とする乾燥や不快感を解決)は、同社に高付加価値を生み出している。
 〝熱〟を共有し、それに向かう社風。倉本氏の言葉を借りるならば、〝アトモスフィア(空気感)〟が醸成されているのだろう。

【近江商人の〝熱〟を浴び】
「人生で受けた影響ですか。今まで出会った人の全てが自分の肥しとなっています」強いて挙げるなら、と言葉を継いだ。
 剣道に勤しむ学生時代、進路に悩む自分の道を決めるキッカケとなったのが、父が見せてくれた『てんびんの詩』だったという。
 大店の長男が天秤棒を担ぎ、鍋蓋売りの行商に出る。13才の少年に課せられた初の試練。「売り手と買い手の心が通わなければ物は売れない」という商いの魂を知る映像作品である。
「〝商い〟に感じるものがありました。モノではなく、心を売っているんです」
 〝三方よし〟の精神が、倉本氏の胸を打ったのだ。歩む道は決まった。

【更なる〝熱〟を求め】
 社会人として空調機の総合販売商社に就職。業務に邁進し、自分としては充実した日々を過ごしていたある日のことだ。
 親友から「いつまでサラリーマンでくすぶっているんだ」という〝熱〟を受けたという。それは「自分が何をしたいのか」を改めて考える機会となる。
 倉本氏は、創業社長の父の元へ戻ることを決めた。

【今後の展望】
 空調事業を柱とし、顧客の声を反映したオリテウム事業や摂美事業も展開する、㈱京都設備。倉本氏が見据えるものは何か。
「今の冷凍・空調業界に必要なのは活気」
 業界を活性化していくという夢やロマンに〝熱〟を注ぎたいと意気込む。
 設立60周年事業の一環として、来年1月30日(火)~2月2日(金)に東京ビッグサイトで開催のHVAC&R JAPAN 2024(冷凍・空調・暖房展)に出展を予定。同社の事業紹介だけではなく、これからの担い手を魅了できるものを示していきたいという。

【経営者かくあるべし】
 「経営者ってのは、開拓者でないと。その道に惚れ込んでついてきてくれる人たちに夢やビジョンを示していかなければなりません」
 社長として、人材管理ができるのは当たり前。その先が重要なのだ。
 「ワークバランスで仕事を選ぶ人が増えていますが、〝働きやすさ〟=〝働きたい仕事〟なのでしょうか。
〝働きやすさ〟よりも〝働きたさ〟を社員に魅せていかなければなりません」

【若い世代へ】
 「早く自分にとっての夢やロマンを見つけられるよう、色々な体験をしてください」
  後悔のない、濃厚な学生生活を過ごして社会に出て来て欲しいと倉本氏は語る。
 「自分のやりたいことは多くの〝社会人経験〟で気づくものではなく、豊富な〝社会体験〟から築くものなんです」
 だからこそ、学生の特権を活かして欲しい。そして選び取った業界を極めて欲しい、と氏は繋げた。

【編集後記】
 気づくと倉本氏の〝熱〟に当てられ、まるで同社の一員のように耳を傾ける自分の姿に驚かされた。
 確固たる理念を持ち、自らの行動で示していく倉本氏の〝アトモスフィア(空気感)〟は今後も広がっていくだろう。

【企業情報】
会社名/㈱京都設備
代表者/倉本和幸
本社/京都市南区上鳥羽菅田町39(京阪国道十条下ル東側)
℡/075-661-1155

(本紙記者 佐々木雄嵩)

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