新作映画が出るたびに、どの映画を観ようか悩む人も多いのでは?シリーズ「シネマティック・ロンダン」では、フリーアナウンサーであり、映画パーソナリティーでもある津田なおみ氏による、おすすめ映画のレビューをいち早くご紹介します♪
原作を手に取って驚いたんです。表紙に俳優の大泉洋が微笑んでいる姿が掲載されています。本文扉にも巻末ページにも彼の写真が…。 原作が映画になってその主人公が、本の帯を飾ることはあっても、表紙自体に写真が印刷されているなんていうことはなかなかないなぁと思っていたんです。 すると、後のニュースで知ったのが、元々、大泉洋を主役にして映画化することを想定し、執筆されたユニークな作品だったのです。しかも、神戸新聞社出身で、『罪の声』などの作家、塩田武士氏が執筆したのですが、彼のお姉さんと私は、実は友人で…。でも弟が作家なんて言うことも知らなかったので何度もびっくり!そんな原作を、『紙の月』などの吉田大 …
神戸・新開地で生まれ育った映画評論家の淀川長治さん。私は、彼が書いた映画愛にあふれる昔の評論を読むたびに新たな視点を得ています。神戸を愛しすぎていた淀川さんは、阪神淡路大震災後、間もないイベントに招かれた際、被災した神戸を見るのが辛いとの理由で固辞したと聞いています。その後、あるインタビューで「神戸に見舞いに行こうと思ったけれど行けなかった。神戸の人に恨まれていると思うの。ごめんね。」とおっしゃったとか。 こんな風に、震災後の神戸に「ごめんね。」と思っていた人は、多くいるだろうと思います。 私もその一人。当時、堺に住んでいた私の家は、食器棚が倒れ、食器が全て割れると言う程度の被害ですみま …
見終わったあと、希望とやるせなさが混濁して複雑な思いになる作品です。 昨年、『新聞記者』で日本アカデミー賞を受賞した。近年最も注目されている藤井道人監督作品です。 物語は3つの場面で構成されています。最初は1999年。やんちゃで無鉄砲な19歳の山本賢治(綾野剛)は、柴咲組組長(舘ひろし)の危機を救ったことから、父子の契りを結ぶことになる。柴咲組の組員として、家族となるのです。続く場面は2005年。賢治はこの世界で名を上げ、組と組長を守るために、罪を犯し逮捕されてしまいます。そいて、2019年、14年の刑期を終えた賢治が直面したのは、暴対法の影響で、世の中から排除されていくやくざの姿でした。 こ …
巨匠、黒澤明(1910~1998年)は、「映画監督とは、戦場の第一線で指揮をとっている司令官」と例えました。 しかし、彼は、徴兵検査は受けたものの、忌避され戦地には赴きませんでした。 身長180センチ以上で、特に身体的異常もないのに、なぜか徴兵されなかったのです。 それについて、彼は自伝といわれる『蝦蟇の油』で、20歳の徴兵検査のことをこう書いています。 実は、徴兵検査の担当官が父親・黒澤勇氏の教え子だったので、徴兵を逃れたというのです。 たぶん、それは本当のことでしょう。 黒澤明が検査を受けた1930年(昭和5年)は、世界も日本もまだ平和な時で、陸軍でも師団の削減が行われる時代でした。 です …
予期せぬ新型ウイルスの蔓延は、人の心も歪めてしまうように感じます。いやな事件も増えたように思うし、満員電車のいらだちは以前にも増しているよう。「何が起きようと私らしくいられる」と言っていた艶やかで穏やかな友人でさえ、この間久しぶりに会ったら「不安だ」を連発していました。人は弱いものですね。でも、その弱さを認められると、強く生きる事も出来るかもしれない。 今回、ご紹介する「みをつくし料理帖」の登場人物達は、不幸な出来事にあっても、恨むのではなく、それを生きる力に変える強さを持つ人物ばかり。大ヒットした小説の映画化です。 人のぬくもりが感じられる優しい映画になっています。こんな不穏な時代だか …