全日本作法会で20年以上、作法に携わり、企業や大学にてマナー研修を実施している筆者が送る日本の礼儀・作法に関するチャンネル。 一口に礼儀・作法といってもそこに隠されている、込められている日本の心、文化について発信していきます。
新嘗祭の11月23日は、大阪で「神農さん」と云われる神農祭りが行われる日でもあります。大阪市内、ビジネス街のビルとビルの間にある小さな神社「少彦名(すくなひこ)神社」で催される、無病息災を願う祭りです。 少彦名神社の祭神である少彦名命(スクナヒコナのミコト)は薬、医療、温泉、国土開発、醸造、交易の神様です。 医薬に関係する神様であることから、製薬会社などの信仰を集めています。 安永9年(1780年)に京都の五條天神社より、薬種中買仲間の団体組織が少彦名命の分霊を大阪の道修町に勧請(分霊を他の神社に移すこと)して、すでに祀ってあった神農炎帝とともにお祀りしました。少彦名命は、古事記では神産巣日 …
前稿では、主に庶民の祭りを取り上げました。元々「まつり」というのは「神様を祀る」「先祖をお祀りする」と表現するように、神仏をおもてなしすることと言えます。 大言海(昭和初期の国語辞書)によると「まつる」は「誠を致し、儀を正し、神霊を慰む」とあります。日頃から神様に接しておられる神社や皇室にも「祭り」はあります。 祭りは春と秋に多く催されます。それは、宮中の祈年祭と新嘗祭に対応しての予祝祭と収穫祭でもあります。 そして、神社および宮中での収穫祭が神嘗祭から繋がる新嘗祭となります。 神嘗祭はその年の実りである新穀(初穂)を天照大神に捧げる感謝祭です。天照大神を祭神としている伊勢神宮で行われます …
秋になると、多くの市町村で祭りが行われます。秋祭りは収穫祭とも云われ、その年の実りを神に感謝するのが一番の目的です。お正月よりも大きな、大切な行事としている地域もあります。 現代では「ハロウィン」がメディアでも取り上げられ、若い方が中心に有名になりました。しかし、日本の各地にも子供たちが楽しめるような祭りは今でも健在です。 京都府と奈良県の県境に当たる京都府相楽郡精華町では「月見どろぼう」という行事が現代でも行われています。お月見の日(旧暦の8月15日)、各家では玄関にお菓子を置いておいて、子供たちが各家を訪れ、黙って玄関に置いてあるお菓子をもらってきます。お菓子を黙って持って帰るので、 …
九月の行事として「重陽の節供」があります。九月九日、陽の最も大きな数である「九」が重なるという意味から「重陽の節供」と云われています。旧暦の九月九日ですので、新暦の10月頃になります。「重陽の節供」は別名「菊の節供」とも云われています。新暦の9月では、菊の花はまだ早いですが、10月頃には菊も咲いています。 重陽の節供には菊にまつわる行事がいくつか伝えられています。お酒に菊の花びらを浮かべて飲む菊酒。前日の9月8日に菊の花に綿を被せて、翌日露で濡れた綿で肌を清める菊の被綿(きせわた)。乾燥させた菊の花弁を詰め物にして作った菊枕。菊には薬効成分があり、体の余分な熱を冷ますとされ、邪気を祓うと云 …
外国の人に喜ばれる日本の伝統文化の一つに「折り紙」があります。色とりどりの正方形の紙が、折ったり開いたりすることで、花、鳥、など自然の動植物や車、船などに変化します。 この「折り紙」の起源は「折形礼法」に遡ります。進物を包んで渡すという文化は、平安時代から普及しており、公家は主に絹の布に包み、絹の紐で結ぶやり方が主でした。とはいえ、「枕草子」には御餅を紙に包んで贈り届けられたことが出てきますので、和紙も使用されていたのでしょう。一方、武家では、主に強靭で白い和紙を使用しました。和紙で包み、やはり和紙を縒った紙縒り(こより)または水引で結ぶという独自の文化を考え出したのです。 折形(おりがた …