建設経済新聞 出張所

㈱髙岸工務店一級建築士事務所 代表取締役 髙岸健司氏【シリーズ 風貌~私の経営哲学~】

【大工上がりの一級建築士】
 「私は元大工なんです。若い頃は建築の現場で、のこぎりやかんな、墨壺などを使って働いていたんです」。
 日焼けした精悼な笑顔で語り始めた。㈱髙岸工務店一級建築士事務所代表取締役社長の髙岸健司氏は、現在一級建築士として同社を率いている。
 何がきっかけで大工から一級建築士の道を歩むことになったのか、興味深々で聞いてみると、意外な答えが返ってきた。「父とは反りが合わず、いつも反感を持っていました。父は、二級建築士だったので、越えてやろうと思ったんです」。
 どうやら、父への反骨精神が挑戦へのバネになっているようだ。

【不屈の精神で一級建築士試験へ挑戦】
 一級建築士の資格を取る為に、建築専門学校に通う日々が始まった。昼間は当然、現場で大工としての仕事をこなし、夜、学校に通って勉強。日曜日は朝から夕方まで講習を受け、その後は、自習室で夜まで勉強する日々が数年間続いた。「今から思えば、日曜日の家族サービスは何もできなかったけど、それを容認してくれた家族に感謝ですね」と氏はにこやかに語った。
 仕事をしながらの試験勉強はなかなか大変だったようだ。一級建築士の試験は学科と製図がある。学科がパスできても、製図は審査官の主観で判断されるのでなかなかの難関だそうだ。氏は、製図は4回も不合格、それでもあきらめず努力を続け、5回目で合格。父を超えてやろうという強い精神力、そして、学生時代に猛烈に厳しいサッカーの練習に耐えてきた忍耐力があったからこそ、ここまで頑張れたのではないだろうか。
 「合格するまで数年かかりましたが、あの頃は若かったので1回目ですぐに合格していたら遊んでしまっていたと思います。その間沢山勉強できたと思ってるんです」。氏は明るく言葉を繋いだ。購入する人にとって、『家』は一生住むものである。氏のように人生の苦難を乗り越えてきた設計士なら、施主の様々な要望に応えられる度量があるのではないだろうか。

【二刀流の一級建築士】
 髙岸氏は建築士として、家の設計、デザインを考案する仕事を担う。加えて、大工として現場で施工もできる。まさに、二刀流である。これは、施主に大きなメリットだと思い、その点を聞いてみた。
 「構造や力学が分かるが故に、安全性を重視してしまうので、施主はかえって高くついてしまうことになるんですよね。両方分かるのも良し悪しですね」。氏は謙遜気味に語った。

【設計哲学】
 環境保護、省エネが叫ばれる昨今、家の在り方も時代とともに変化する。そんな時代でも、仕事の進め方は、顧客と納得するまでとことん話し合って、建築法を順守し、構造上の安全性とデザインを考慮しながら、限りなく顧客のニーズに近い設計をする。これがぶれない氏のやり方である。
 また、氏の言葉からは、持続可能な省エネ住宅として、断熱効果のある壁や屋根を設置して燃料費は節約できても、初期投資を回収するのに十年以上もかかるような住宅の推進については全面的に賛同しかねるといった、確固たる思索の一端も垣間見えた。

【建築業界を目指す若者へ】
 これから、この世界を目指す若者への想いを語ってもらった。
 「知識があるだけではだめです。2つとして同じ現場はないんです。実務をしっかり覚えて、その現場に応じて、仕事ができないといけない。あと、コミュニケーション能力が非常に大事です。腕が良くても、施主と会話もしない職人は顧客からのクレームが多くなるんです。逆に腕が普通でも、話を聞いてくれる職人はクレームがほぼないんです」。氏は力を込めた。多くの場数を踏んできた氏だからこそ、重みを持つ言葉である。

【氏に託す想い】
 氏には元気がみなぎり、どこまでも、顧客満足度が高い家の設計にかける強い意志が感じられる。現在は、人生100年時代。いつまでも快適に住めるいい家を設計し続けてもらいたいものである。
(社主 上中康司)

【企業情報】
会社名/㈱髙岸工務店一級建築士事務所
代表者/髙岸健司
本社/京都府向日市寺戸町南垣内25-1
℡/090-1901-8029

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