建設経済新聞 出張所

㈱TUKUYOMI HOLDINGS 代表取締役 山岸忍氏【シリーズ 風貌~私の経営哲学~】

【プレサンス元社長冤罪事件】
 今回お話を伺うのは、「第二の村木事件」とも呼ばれる、㈱プレサンスコーポレーション元社長冤罪事件の当事者として有名な山岸社長その人である。様々なマスコミにも取り上げられ、自著『負けへんで!』の中でも地検特捜部の驚くべき取り調べの実態が赤裸々に綴られている。
 248日も拘留され、自ら作った一部上場企業を失うこととなった氏が、どうやって立ち直ったのか、新たな会社で何を目指そうとしているのか。興味深くインタビューに臨んだ。

【ウェイクサーフィン】
 「体を動かすのが好きなので、今日も午前中は琵琶湖でウェイクサーフィンをして来たんですよ」。氏は笑顔で迎えてくれた。還暦を過ぎてなお、激しいスポーツに興じられていることに驚いたが、氏の体からは、ほとばしるバイタリティを確かに感じた。
 サーフィンをしないときは自転車に1時間半乗る。さらに続けてジムでトレーニングに励む。聞くとこれが趣味の一つでもあるそうだ。

【TUKUYOMIHOLDINGS】
 「今度の会社では本当にやりたい仕事だけするつもりなんです」。自身の気に入った物件だけを手掛けたいそうだ。プレサンスも当初はそういう思いで始めたのが、いつしか、やらなければいけない仕事に変わって行った。多くの仕事が目の前を高スピードで駆け抜けて行った。その都度都度における氏の「即断・即決」、それこそがプレサンス社の強みだった。結果、10数年で一部上場企業を生み出した。しかし、中身、実態は巨大な“山岸個人商店”だった。そのことが前述の事件に巻き込まれる原因にもなって行ったそうだ。
 「今度の会社は自分の信頼する少数の仲間だけでやっていきます」。氏の言葉に力がこもる。それでも、すでに今期の売り上げは100億円に届く勢いで、来期以降も200億円程度を見込んでいる。今後は近畿のみならず全国に事業展開していく、また、ハワイでもすでに事業を計画していると語る氏の経営手腕には驚かされるばかりだ。

【一隅を照らす】
 プレサンスの企業理念は『一隅を照らす』。天台宗の最澄上人の言葉である。一人一人が置かれた立場で精いっぱい努力して頑張ることこそ、美しく、かっこいい。その精神を持っていれば、買い手良し、売り手良し、世間良しという三方良しが実現するということを社員に伝えたいという想いから、この言葉を理念に掲げたという。この理念はTUKUYOMI HOLDINGSにも脈々と受け継がれている。

【強い組織づくりの秘訣は社員の人柄】
 社員の採用哲学を問いかけてみると、“最も大事な素養は人柄”だという。性格に欠点のある人間は一時的に成果をあげたとしても長続きはしない、また、誠実かつ素直で、将来の夢を持っていることも大切だという。筆者もこれまで、いくつかの会社を経営して様々な社員を見てきたが、まったく同感である。「不動産業でこういう若者が起業したいのであれば応援したいと思いますよ」と山岸氏は言葉を繋いだ。

【でっち上げ事件、損害75億・保釈金7億】
 今回の大阪地検特捜部によるでっち上げ逮捕・起訴により、個人保有の株式の売却損だけでも75億6000万円の損害を被ったという。何よりも、我が子同然に育ててきたプレサンス社をライバルの㈱オープンハウスに売り渡し、社長を辞任しなければならなかった。断腸の思いであったことだろう。しかし、保釈金7億円と引き換えに最強弁護士チームによって、248日にも上る不当な拘留から保釈された。その後、同弁護団によって無罪判決を勝ち取った。
 氏に、検察の捜査に対して今現在何を望むか聞いてみた。2010年の村木厚子元厚労省局長冤罪事件を機に検察の在り方検討会議の報告書を受け、最高検察庁は検察の理念を公表している。そこには検察のあるべき姿がかかれているが、実際の現場の検察官は正反対の所業を繰り返しているのが実態であるという。「検察には、この理念に戻るように望みます。こんな、冤罪事件を起こしておいて謝罪の一言もない。また、捜査を改善しようとする動きすらないんですよ」。厳しい表情で言葉を繋ぐ。だからこそ、違法な取り調べをした検事を刑事告発、国家賠償の訴訟を起こし、著書の出版にも至ったという。「もう二度と私のような冤罪事件を起こしてほしくないんです」。この一連の行動には真にその願いがこもっている。
 長い拘留中は想像を絶する絶望と孤独との闘いであったと思われる。日々何を思い、どんな希望をもって、三畳一間の独房で過ごしたのだろう。考えただけでも、胸が痛くなる。耐え抜くことができたのは、氏の精神力の強靭さも一因であろう。しかし、氏は「家族、友人、仕事仲間の励ましがあったからだ」と力を込めた。

【新たな始まり】
 現在の氏には元気がみなぎり、新しい会社へかける強い思いが感じられる。
 今まで築いた信用もある、仲間もいる、お客様もいる。“だから、まだまだやれるぞ!”そんな意気込みが伝わって来る。
(社主 上中康司)

【企業情報】
会社名/㈱TUKUYOMI HOLDINGS
本社/京都市東山区三条通東分木町280
℡/075-366-5486

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