建設経済新聞 出張所

㈲アールシィー建装 代表取締役 小柴隆幸氏【シリーズ 風貌~私の経営哲学~】

【人間関係が希薄な時代に】
「この業界には悪徳業者も結構いてね。無理な営業が横行しているせいで、迷惑してるんですよ」
 ㈲アールシィー建装では、飛び込み営業は絶対にしない方針を執っている。
 看板を出したり広告を打つこともあるが、何より人の伝(つ)てを大切にし、ひとつひとつの現場に臨んでいるそうだ。
「するとね、職人の働きぶりを見た近所の人が〝うちもお願い〟って声をかけてくれる事もあるんです」
 〝最高の技術と親切・丁寧な対応〟をモットーに掲げる同社。近隣住民は、しっかりと見ているのだ。

【塗装職人の矜持】
 同業他社との違いはあるのだろうか。
「出来ることは出来る。出来ないことは出来ない、とハッキリ言う点ですかね」
 仕事を請ける際は、お互い納得するまでしっかり話し合うそうだ。
 売り上げも利益も、開始前に明確にしておきたい。
「安く請けたら職人に迷惑がかかります。材料や工法の選定でも、手を抜かなくてはいけませんからね」
 目指すものは、施工者も顧客も満足のいく結果だ。
 〝急(せ)きも慌てもせんでキッチリやらせて頂きたい〟そのスタンスを変えずに今日までやってきたという。
「後で喉詰めん仕事がしたいんですよ」

【独立までの歩み】
「ペンキ屋になりたいねん」
 相談した先輩の紹介で、24歳の時に京都市山科区の塗装店へ入社。8年間の職人修行を経て、番頭として営業管理の業務に就く。
「家には全然帰らなかったですね。結婚していたのに、えらい迷惑かけたなぁ」
 〝京都で一番の会社に〟という夢があった。勤め先の社長との約束である。

【独立のキッカケ】
 42歳になる年、会社を去る意志を固めた。勤めて18年、京都で2番の規模にまで成長していたそうだ。
「やるだけやったら、やったもんを持って帰る」を合言葉に、社員一丸で頑張ってきた。
 しかし、職人は昇給しても事務職の給料は一向に上がらない。見ていて納得できなかった。
「社長に怒ってね、最後は辞めることにしましたよ」
 それでも年度末までの半年間は在籍した。自分が関わった仕事の責を果たしてから、㈲アールシィー建装を立ち上げたのだ。

【父と子】
「なかなか帰って来なかった息子が戻って来てね」
 風の噂で、横浜でホストをしているとは聞いていた。
 色々なホストクラブのホームページを調べて、どうも見た顔がいるなと思ったそうだ。よくよく見ると、名前もそのままだった。
「やりおるやんけ」
 怒るではなく、純粋にそう思ったそうだ。ホームページに掲載されるという事はホストとして上位で張っているのだ、と。
 その息子がある日、父の仕事を手伝いたいと実家に顔を出したそうだ。
「まあ、やる気があるなら継いで欲しいけど、ないなら諦めるだけですね。勝手に感じて、勝手に覚えていけば良いだろうと思います」
 一見突き放すような物言いだが、息子を語る表情は楽しげにも感じる。
「周りの皆さんからは〝良い子や〟と褒めてもらえているようです。ホスト業の話術が活きていますかね」
 言われた仕事をこなすだけでなく、自分の人脈を駆使し、新しい仕事を取ってきたこともあったそうだ。

【今後の展望】
「息子には、順当に資格を取らせています」
 直近では、最新のアスベスト封じ込め工法を取得したとのこと。
「日本には工場が180万棟あると言われています。アスベストはそのままにしておけませんから、需要はまだまだありますね」
 小柴氏は今後、職人はエリートの時代が来ると読む。業界の深刻な人手不足により、技術を持った職人の単価は更に上がるだろう。
「職人は絶対に必要です。なくなりませんよ」
 今が種の蒔きどきなのだ。

【若い世代へ】
「仕事への向き合い方、ですか」
 少しの思索があり、小柴氏は言葉を続けた。
「職人の世界は、給料をもらいながら仕事を覚えさせてもらってるんです。一から習いに来て、学ばせてもらっている。そのことへの謙虚さを忘れてはいけませんね」
 技術には、その人の性格が出るという。如何に謙虚であるか、そこが肝心だ。これはどんな仕事にも当てはまることだろう。
「でもね、〝アホ〟になる必要はないんですよ。おかしなこと、納得できないことには〝反抗〟してもいいんです」
 ニヤッと笑い、そう締めくくった。

【編集後記】
 小柴氏の歯に衣着せぬ語り口は、皮肉さの裏に温かみが溢れ、そして面白い。
 豊かな表情には親しみも覚える。言葉の端々に漂う〝謙虚さ〟と〝矜持〟を合わせ持つことの肝要さを考えさせられる取材であった。
(本紙記者 佐々木雄嵩)

【企業情報】
会社名/㈲アールシィー建装
代表者/小柴隆幸
滋賀営業所/大津市浜大津2-1-15
℡/0120-516-215

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