【技術を社会に笑顔をあなたに】
「ゼレンスキーさん来日時のコメントには感動したね」
応接室に通され、挨拶が終わるや否や、奥田氏は言葉を紡いだ。
ゼレンスキー氏の〝広島を復興させた日本の技術力に期待〟の言葉に、感銘を受けたのだそうだ。
「われわれ土建屋が世界中から集まって、ウクライナの復興を応援するんですよ。そのとき、当社は何ができるのかを考えてみました」
恐らく、中小企業は現地入りが難しい。それでは、どうするか。その構想を語り始めた。
「日本の技術を送ります」
来日している留学生や避難民の帰国が叶うその日まで、同社で働きながら技術を学び、復興に役立ててもらう。
技術を伝えるためには、語学力が必要だ。希望する社員には経費で英語教育を受講させる心積りである。
ゼレンスキー氏のインタビュー報道を見て以来、自分の中に熱く燃えるものを感じているという。
何年先になるか分からないが、損得ではなく、社会貢献・国際貢献に繋がることを模索し続けたいと語る。
【トランシットが結ぶ縁】
開口一番からの熱量には、圧倒されるばかりである。奥田氏を形作ったものは何なのか、氏が歩んできた道を伺った。
「創業当時の三東工業社は、生家から近かったんです。信楽にありましてね。4、5歳だから、まだ幼稚園の頃です。何度も遊びに行って、器具を覗いたり、触ったり。上下逆さまに映って、面白いなぁと」
建設業を身近に感じ過ごした幼少期。学生時代は建設現場でアルバイトをし、大型機械の操縦も教わった。
その後、測量・設計と段階を追って経験を重ね、現在に至る。
「思い起こせば、建設業界に育ててもらったようなものですね」
幼少期にトランシット(角度を計測する測量器械)を覗いた経験がなければ、この業界に興味を持っていなかっただろうと振り返る。それくらい衝撃を受けたそうだ。
「この仕事は天職だと思っていますよ」
【地域に根差す企業として】
ウクライナ復興への国際貢献構想や、SDGsへの取り組みなど、世界視野で舵を切り続ける奥田氏。
国内ではまだ普及率の低いCLT工法の導入、廃棄物を固形燃料化する新会社設立など、さまざまなアイデアとチャレンジ精神で事業領域を広げてきた。
この勢いに乗り、県外進出も近いのだろうか。
「滋賀を離れるつもりはないですね」
地元に根差し、琵琶湖の自然環境を守るための企業で在りたいそうだ。
今後は環境分野の事業に注力し、本業と並ぶ柱にしていきたいと意気込んだ。
【家族との時間】
「家族の〝支え〟というか〝犠牲〟というべきか。とにかく、ここまでやってこれましたよ」
一般社団法人滋賀県建設業協会、公益社団法人滋賀県建設産業団体連合会の会長を兼任する奥田氏は、多忙の身である。重責から離れ、心休まる時間はどのように過ごされているのか。
「家に帰ったら晩酌。癒やされるね」
妻の料理をつまみに、息子とグラスを傾けながら軽口を叩き合っているそうだ。
「うちは〝姉さん女房〟なんです。『あなたのお母さんじゃないわよ』とよく言われるけど、私は母だと思ってますよ。だから息子とは兄弟になるね」
余暇を語る笑顔から、家族の関係性が垣間見えた。
【今後の目標】
「どれだけ自社の技術で社会に貢献できるか。チャレンジできるか」
これに尽きるという。
企業として自社の規模を大きくする、利益を上げる、という目標は当然のことだ。しかし、それだけではいけないという想いが常にある。
「利益、売り上げは後から付いてくるものです。それは前のオーナーからも言われましたし、その通りだと思いますよ」
【若い世代へ】
最近は〝こじんまり〟とした若者が増えてきたと感じているそうだ。
「土建屋ってのは、ホンマはどんぶり勘定で良いと思うんです。イチかバチか、それで会社として成り立ってますからね。案外底力はあるんですよ」
だから、と奥田氏は言葉を続ける。
「何事もチャレンジやな、失敗を恐れずに」
【編集後記】
周囲への目配りと、先を見据えた行動力。豪快さと繊細さを合わせ持つ人だと感じた。
社長の椅子は「ハート、熱意」がある人に譲りたいと考えているそうだが、代替わりはまだまだ先になりそうだ。
「技術を社会に 笑顔をあなたに」奥田氏は進み続ける。
(本紙記者 佐々木雄嵩)
【企業情報】
会社名/㈱三東工業社
代表者/奥田克実
本社/滋賀県栗東市上鈎480
℡/077-553-1111
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