古本 尚樹の防災channel

大規模地震から、物流を考える。

1.大規模地震から、物流を考える。
 まもなく、東日本大震災から10年の節目を迎えた。ただ、先日同震災の余震とみられる福島沖を震源とする震度6強の地震が発生して今、その復旧活動中でもある。我が国は災害発生と復旧、復興というサイクルの中に常にいるのだ。南海トラフ巨大地震や首都直下地震への警戒も必要だ。東北沿岸の太平洋では30年以内に震度7クラスの地震発生確率が90%を超えており、日本全体として防災対策が重要だ。関連して災害対策の生命線ともいうべき物流や関連事業への対策は更に重要になる。そこで、このテーマを考察する。

(1)震災直後の物流での課題

 同震災によって小売店や倉庫、工場などのサプライチェーンの拠点が被災した。しかし、大きく被災したこれらの建造物は初期コストを抑え、多数店舗を展開するため簡易な作りになっていたため被害を大きくした傾向は否めない。また、売り場を開放的にするために柱が少ないことも一因だろう。港湾近傍など沿岸部に立地した物流センターなどの被災も大きかった。港湾の背後地は大量輸送によるコストダウンが可能なため石油製品の油槽所をはじめ、大規模な物流センターや倉庫が立地していた。また仙台をはじめ、東北地方の広い平野は沿岸部に広がっているため、駐車場を含め広い用地を必要とする物流施設は港湾を利用しない場合でも沿岸部に多く立地しており、津波によって大きな被害を受けた。 
 多くの物流センターにはサプライチェーンの主要情報(発注情報、顧客情報等)が集中していた。サーバーの被災で主要情報が失われ、倉庫に物品が存在しても、それを配送する届け先、品目、物量が把握できず、大混乱となった。

 一方、製油所、油槽所の地震・津波被害によるガソリン・軽油などの輸送車両燃料の不足問題も大きかった。東日本大震災により仙台等の東日本の基幹製油所が被災した。代替製油所の根岸や鹿島製油所も被災したため、更に長期間、広域で供給が滞った。油槽所の被害も大きく、仙台、気仙沼等が被災し、八戸、塩釜、小名浜が 3 月中に活動を再開するにとどまった。石油の輸送拠点の石油元売り各社の統計では、供給量が震災前に復旧したのが 3月末だが、在庫の払底していた被災地では 1 ヶ月後の 4 月初旬まで供給不足になった。
 道路への被害は大きかった。しかし、幹線道路を中心に被災から2週間程度で仮復旧している。最も大きな影響を与えたのは港湾の被災である。津波によるガレキや自動車などの航路への大規模な流入や岸壁、クレーンの被災により、港湾は半身不随に陥った。東北の自動車関連工場の被災による、全世界的な部品の供給不足となった。
 電気、ガス、水道といったライフラインの途絶も大きかった。ライフラインの途絶は被災地の生活に大きな影響を与えた。

(2)被災地や被災者への影響

 原子力発電所の被災の影響は今なお続いている。特にコミュニティが戻ってこないので、住民生活自体が原発周辺地区では見えてこない。被災地での物不足、特にガソリンなどの燃料不足は深刻になった。被災地以外でも水や乾電池などの物不足が続いた。計画停電も行われ、電力での使用に制限がかかった。首都圏などでは、いわゆる帰宅難民が大量に発生した。帰宅困難者は移動の際に二次被害を受けやすい。家族の安否確認にも停電やバッテリー不足でツールの利用ができず、困難を極めた。一方で、高齢者や身体障がい者における支援のあり方が困難になった。支援者も地震や津波の被害にあう危険性が高まったり、家族の支援者も高齢化しているなど日本の社会的課題による要因も色濃く出てきた。

(3)震災後の物流対策について、企業のBCPに変化はあったか

 NTTデータ経営研究所によれば、震災後8年を経過して、BCPを「策定済み」企業は43.5%であった。「策定中」までを含めると、64.9%の状況であった。実際、策定したBCPが機能した企業は1.7倍に増加しているという。従業員規模別にみると、5,000⼈以上の企業では「策定済み」「策定中」と回答した割合が合わせて約9割であるのに対し、99⼈以下の企業では約4割であり、規模の⼩さい企業ほどBCPの策定率が低い状況が明らかになっている。さらに99⼈以下の企業では、「策定予定なし」と答えた割合が23.9%と最も⾼い。業種別では、⾦融・保険業で「策定済み」が68.7%と最も⾼く、BCPへの取り組みが最も進んでいることがわかる。教育・医療・研究機関ではBCPの策定が進んでおらず、さらに「わからない」と回答した割合が17.3%と最も⾼いことから、事業継続の取り組みへの意識の低さも伺える。尚、流通系業種もこれら教育・医療・研究機関に次いで策定に関しては低い水準となっている。

地域別にみると、関東が「策定済み」と「策定中」を合わせて68.9%と最も⾼い。最もBCP策定が進んでいないのは北海道であり、「策定済み」と「策定中」を合わせて51.2%であった。資本⾦別と売上⾼別でのBCP策定状況は、従業員規模と同様に規模に⽐例しており、規模の⼩さい企業ほどBCPの策定が遅れている状況を表している。

(4)地域への貢献・効果と今後のあるべき災害時の物流について

 物流は日常生活の物資供給に重要である。また被災地への支援物資供給でも物流無くしては、支援が成立しない。そこで、まず地震や津波、洪水などの危険性に配慮して、物流センター、配送センターの立地点や地盤を考慮することは重要である。拠点間の情報は無線化することにより、被害を局所にとどめる。懸念されるのは、東京湾に集中する石油コンビナートの被災である。東京湾の石油コンビナートは東京湾の航路網、横浜港などの大港湾と企業の専用ふ頭で成立している。東日本大震災のように東京湾にガレキなどが流入すれば港湾施設と共に復旧は難しい。店舗や物流施設の京浜地区からの分散化により、リスク分散化を図る必要がある。

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